ヒゲガビチョウの情報をお寄せください。  

香川県へも侵入・定着している外来種 ヒゲガビチョウ

ヒゲガビ1
▲ヒゲガビチョウ 性・齢不明・ 綾川町 2016.11.3 PHOTO◎岩田篤志(鳥類標識調査による一時的な捕獲、以下同じ)

四国でのみ確認されている外来種
 ヒゲガビチョウ Garrulax cineraceusはソウシチョウと同じくチメドリ科の外来種。本来の生息地は中国中・南部からミャンマー北部・インド北西部です(MacKinnon & Phillipps,2000)。日本では四国、高知県と愛媛県で繁殖しています(日本鳥学会,2012)。

 最も古い観察記録は1998年9月(愛媛県愛南町)、高知県では2000年8月(土佐町)です。2005年4~5月の聴取調査では愛媛県・高知県で9市町・25例が確認されており、確認地点は低標高地から標高1200m付近まで。この時点でかなりの広がりを見せていました(濱田ら,2006)。図鑑では標高200-2570m、多くは標高1800m以下に生息するとされていますので(MacKinnon & Phillipps,2000)、四国全域で生息可能と考えてよさそうです。
 ソウシチョウが狭い場所で高密度で生息するのに対し、ヒゲガビチョウは低密度で広く分布しているとのことであり(四国外来鳥類研究会,2007)、ヒゲガビチョウの方が「広がりやすさ」では有利なのかもしれません。

 なお、本来の生息地では下記の3亜種が認められています。
 ・G.c.cineraceus  最も西に分布する基亜種、羽色全体が淡色で、頭部に赤栗色部がない。
 ・G.c.strenuus   中国南西部に分布、基亜種よりもやや濃色だが、頭部の褐色部は比較的淡色で不明瞭
 ・G.c.cinereiceps  中国国南東部に広く 分布、全体に濃色で頭部の赤栗色部が明瞭
 これについて、2006年に高知県で2個体を鳥類標識調査により調査した結果では、頭部の赤栗色部が明瞭であることから亜種cinereicepsの可能性が高い(片岡ら,2006)とし、また日本に侵入しているのはこの亜種として掲載している図鑑(Brazil,2009)もあります。

香川県へも侵入
 香川県でも様々な外来種が確認されますが、ドバトなどの古い外来種を除き、完全に定着・拡大している外来種の小鳥類はソウシチョウとハッカチョウくらいです。ソウシチョウは確認された時期・場所から、2004年にレオマワールドから台風で逃げた約150羽が起源であるのがほぼ確実。ハッカチョウも綾歌町での繁殖個体が分散しており、これもレオマワールドから逃げ出した個体が原因ではないかと考えられています。このように、香川県の外来鳥類は、一定数の個体数がまとまって逃げたことが、定着の契機となっています。
 一方、ヒゲガビチョウは愛媛県・高知県で分布を拡大してきたもの。このため、まずは香川県西部で確認されるだろうと考えていましたが、2006年・2007年に諸報告が出て以降も県内での観察情報がないため、香川県にはまだまだ侵入していないのだろうと筆者(岩田)は考えていました。
 ところが2015年10月、香川県にソウシチョウ調査に訪れた県外の研究者によって、綾川町大高見峰でヒゲガビチョウ5羽が確認されました。よりによって香川県の真ん中であり、既にこの地域以西では侵入している可能性が高くなりました。
 その後、県内のウォッチャーによる報告がなされないまま、「まんのう町尾ノ瀬山でもいた」「◯◯で見た」という話を聴くことが多くなり、少なくとも香川県中西部では完全に定着しているようです。またソウシチョウの例からみると高松市公渕公園や藤尾神社でも、近いうちに確認されるのではないかと思います。

香川県での調査が必要
 継続調査をするため、筆者も2015年に確認された大高見峰で鳥類標識調査を実施し、2016年11月・12月にそれぞれ1羽を捕獲・放鳥しました。四国の他地域では広葉樹の二次林、スギ・ヒノキ人工林、落葉広葉樹天然林、モウソウチク林などで記録されていますが(濱田ら,2006)、大高見峰の調査地もスギが植林された谷に隣接するササ林(標高177m地点)であり、スギ林周辺に生息しているようでした。
 しかし2017年1月には声も聴けず、2017年4月には再び声を確認するようになりました。まだ1シーズンだけですが、厳冬期には移動している可能性があります。

 なお、筆者が捕獲したヒゲガビチョウも頭部の赤栗色部が明瞭ですので、亜種cinereicepsの可能性が高く、そうすると愛媛県・高知県と同亜種ということになり、分布拡大してきたという可能性を補強することになります。
ヒゲガビ2
▲ヒゲガビチョウ 性・齢不明・ 綾川町 2016.11.3 PHOTO◎岩田篤志

 10年程度の間に香川県へヒゲガビチョウが侵入したとすれば、今後の10年程度の間に、県内各地で観察される程分布を拡大すると思われます。しかし外来鳥類を駆除することは極めて難しく、現時点ではての打ちようがありません。

 その中で、私たちに「できること」は、記録を残し、同じ過ちを繰り返さないことです。

 いつ、どこに、何羽程度がいるのか。実は見つけやすいハッカチョウ、注目度が高いソウシチョウと比較して、県内のヒゲガビチョウについては、まだほとんど報告されていないにも関わらず、県内のバードウォッチャーの多くは「最近よく見る鳥」として慣れつつあります。
 今、この時が、ヒゲガビチョウの分布拡大の激動期にあたります。いずれ正式な報告にまとめたいとも思いますので、ぜひ香川県でヒゲガビチョウを観察したら、その情報を本会までお寄せください。


ヒゲガビ3
▲ヒゲガビチョウ 性・齢不明・ 綾川町 2016.12.31
翼は丸く、あまり長距離を渡りそうにない。

ヒゲガビ4
▲ヒゲガビチョウ 性・齢不明・ 綾川町 2016.12.31
 尾は特徴的な模様がある。

(参考文献)
・2006,濱田哲暁・佐藤重穂・岡井義明.外来種ヒゲガビチョウGarrulax cineraceusの四国における記録と繁殖.日本鳥学会誌 55: 105-109.
・2006,片岡宣彦・梶田学・梶田あまね.新たな移入種 ヒゲガビチョウ ‐四国山奥の隠者‐,日本鳥学会 2006年度大会ポスター発表
・2000,MacKinnon, J. and Phillipps, K. A Field Guide to the Birds of China. Oxford University Press
・2012,日本鳥類目録改訂第7版,日本鳥学会
・2007,四国外来鳥類研究会.四国地域におけるチメドリ科外来鳥類の定着実態の解明
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外来種問題  香川県でのソウシチョウ繁殖  

ソウシチョウは、四国でも分布を拡大しつつあります。
ソウシチョウ
(綾川町羽床下 大高見峰山 2008年3月29日 PHOTO◎城戸崇雄)

 香川県では、2204年、ニューレオマワールドのバードパークが台風16号により損傷し、飼育していた鳥約300羽が逃げ出したことが明らかとなりました(9月10日付け四国新聞)。
 このとき、ソウシチョウが約100羽が逃げ出し、野外での繁殖が懸念されていましたが、ついに野外で確認されました。
 一度逃げ出したソウシチョウを全て駆除するのは困難ですので、今後はソウシチョウの分布の変化を注意し、生態系への影響を調べなければなりません。
 もし皆さんのお近くでソウシチヨウを見た場合は、ぜひご連絡下さい。

〔経緯〕
●2004年9月2日
 台風16号により、ニューレオマワールド内のバードパークが破損。鳥類約300羽を逃がす。
●2004年9月13日
香川県より逸出鳥類のリスト届く。大量のソウシチョウが含まれていることが判明。
・ハゲコウ     1羽
・ジサイチョウ   1羽
・レンジャクバト  約40~50羽
・クジャクバト   約40~50羽
・ウシツツキ    約100羽
・ソウシチョウ   約150羽
※なおレンジャクバト・クジャクバト各10羽程度、ソウシチョウ40~50羽は戻ってきているらしい(2004.9.13)。
(以降、香川の野鳥を守る会では、他の保護団体・近県の野鳥観察者等に状況を周知し、今後の注意を依頼している。)
●2007年4月22日
  ニューレオマワールド近くの山地で、複数のソウシチョウを初確認。繁殖し、分布を拡大していることが確実なった。


●ソウシチョウとは
 ソウシチョウは中国西南部からベトナムが原産地の、スズメほどの小鳥です。飼い鳥として輸入されたもののうち、一部が逃げ出して(または野外に捨てられて)日本で繁殖しています。
 現在は九州の1,000m超の山系のほとんど、本州では筑波山系・六甲山系・丹沢山系・秩父山系などで繁殖しており、「営巣環境が類似しているウグイスとの競合が懸念される」と指摘されています(「外来種ハンドブック」,日本生態学会,2002)。
 四国では、2000年前後から高知県・徳島県県境の三嶺山麓(高知県側の旧物部村)で確認され、数年間で高密度の個体群が形成されているようです。このほか徳島県は2005年から剣山系の山地で、愛媛県では昨年に石鎚山、今年8月には東赤石山で観察されているようです(佐藤重穂氏,私信)。
 四国で今後問題となる可能性が極めて高い外来種と言えるでしょう。
 
●香川におけるソウシチョウの大量逸出事件
 2004年9月、ニューレオマワールドのバードパークが台風16号により損傷し、飼育していた鳥類約300羽が逃げ出す事件がありました(2004.9.10.四国新聞)。当時本会が県に確認した結果、その中には多数のソウシチョウが含まれていることが判明しました。
 本会は当時、会誌上で次のように指摘しました。

「そもそも、飼育動物が逃げないように管理するのは、飼育者の最も基本的な責任であろう。台風だからといって許される問題ではない(自宅の庭で飼っていたカミツキガメが台風で逃げ出し、用水路で子どもの指を噛み切ったら大問題になるだろう)。特にこのバードパークを運営している日振動物は鳥獣商(売る側)であり、飼育者としては模範を示すべき立場にある。」
「他県の状況を考えれば、四国でソウシチョウを100羽以上も飼育することには、より慎重になるはずであるし、そうでなければならない。」
 ただそうは言っても、逃げ出した個体を捕獲・駆除することは困難です。そのため本会は、逃げ出した個体が繁殖しないように祈るしかありませんでした。
 しかし今回、その望みが絶たれてしまったのです。
 発見場所は、逃げ出した施設から東北東約2kmの地点。その距離を考えれば、2004年に逃げ出した個体か、その子孫の可能性は極めて高いと言えます。

●香川県での初確認記録
 観察場所:綾川町羽床上 大高見峰登山口
 観察年月日:2007.4.22.
 観察者:城戸崇雄
 コメント:「同時に見たのは最高2羽。メジロと一緒に行動している30分ほどの滞在で、6回確認。」

●たかがソウシチョウ?
 ソウシチョウが、直接ウグイスを減らす可能性は少ないようです。しかしソウシチョウが増加すれば、ソウシチョウを狙う天敵(イタチ等)が増え、それがウグイスまで襲うようになる可能性も指摘されています。
 また、日本の春の山といえば、ウグイスがさえずるものです。ところが今後、それに負けじとソウシチョウがさえずるようになります。外来種が定着すれば、私たちは前世代から引き継いだ「香川の自然」を、次世代へ伝えられなくなるのです。
 子どもたちは、本当ならソウシチョウなどいない、本当の日本の自然の中で育つことができたはずです。しかし私たちの世代の過ちのために、子どもたちは「外来種のいる自然」を受け入れるか、多大な費用と労力を使って全てのソウシチョウを駆除するかを選択しなければなりません。
 時間が経つほどソウシチョウは増え、駆除は困難になります。いわば、私たちの世代は、子どもたちに借金を残したようなものです。

●今後の対応
 これから本会は、今回確認された地域を定期的にモニタリング調査し、個体数の推移や生息状況を把握していきます。また近隣の山系にソウシチョウが拡がってないかも、随時調査したいと考えています。調査結果は、他県や外来種の研究者へ情報提供します。
 残念ながら、本会がソウシチョウを直接駆除することはできません。しかしソウシチョウの生息状況を把握し、「香川県の過ち」を確実に記録して、同じ事態を繰り返さないための反省材料にしたいと思います。
 もし皆さんのお近くの山でソウシチョウを観察したら、ぜひ本会へお知らせください。

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